モクリproject二次創作SS 「ピピと、翼をくれた少女」 ~改行付け&後書き追加~

  • 2020.03.29 Sunday
  • 00:05
SS本篇

ねえおかあさん、おとうさんは おそらのうえにいるの?

--ええ、お父さんはお空の上にいるわ。

おとうさんは いつかえってくるの?

--お父さんはいつも私たちを見守っている。だから心配しなくていいわ。

ぼく、おとうさんに まただきしめられたいな…。

--大丈夫よ、私が代わりに抱きしめてあげる。だから大丈夫。"ピピ"は一人じゃないわ
そう、一人じゃない…。

 

 

 

 

 

 風を感じるとき、全身栗色の毛が撫でられるように揺れる。
暖かい風は温もりを、冷たい風は気持ちよさを。
ずうぅっと立って、両手を広げて風の感触を感じていたいけれども
いつかは弱くなって消えてしまう。その瞬間自分が
消えてしまったような寂しさと虚しさを感じてしまう。

 僕より二回り高い高台の上、眼下には目一杯のお花が咲いていた。
風に揺られて気持ちよさそうに踊っている。僕はワクワクして
飛び降りた。うーんと両手を羽ばたいて飛び降りたんだ。
一瞬感じた、空気が全身に当たるような感覚と、カラフルな花畑が近付く
景色が綺麗だった。
そのまま顔から地面にぶつかった。傾斜になっていたのか僕は痛がる間もなく
お花の海をごろごろと転がってしまう。草と花びらに土が体につき
痛みの中こびり落とすのに夢中で落ちた時の体験をすっかり忘れてしまった。

 

 どうしたら空を飛べるのだろう 体に汚れが付いたまま仰向けになって
青い空を見ていた。草のギザギザした冷たい感触とお花の柔らかい
冷たさ、僅かな風で流れる優しく甘い匂いが僕を包み込んだ。
空から鳥の鳴く声が聞こえて、鳴き声の方へ顔を向ける。

 小さな鳥は空を泳ぐように羽ばたきながら、青い空を突っ切る。
その姿に僕はうらやましさを覚えた。僕も鳥みたいに飛べたらよかったのになぁ。
そうすればあの空を飛びながらどこへでも行ける。お母さんやお父さんの
ところへだって…。

 

 

 

 

 

「ねぇ、ここで寝転がって何しているの?」
ふと僕の顔を覗き込みながら訪ねてくる女の子。真っ白で足まで隠れた
裾に大きなしわが出来るほどぶかぶかのローブを着ていて、唯一見せる
ぼんやりと明るい青緑の毛並みは両親のと違い、珍しく感じた。
不意を突かれてポカンとする僕に対し、小さな口で分かったかのように明るく
大人びていてとっても無邪気な笑顔を見せた。僕はなんだか恥ずかしく
なりながらも、空を飛びたくて崖から飛んだら転げ落ちたことを
伝えると女の子はくすっと可愛らしく笑って返した。
「空を飛びたいんだ、素敵な夢でいいね。」
気持ちいいほど素直な答えに僕は嬉しくなりながら、うんって
返事を返す。起き上がって女の子の前に立つと名前を名乗った。

 僕は、ピピっていうんだ。君の名前はなんていうのかな。
そう尋ねると女の子は両手を後ろに組み頭を下げると僕を見上げるように
答える。

 

「私はリーラっ、よろしくね」
一連の動作に思わず見とれてしまった。なんというか、なんだろうこの気持ちは。
さっきから胸がバクバクしていて、心なしか息も乱れ始めている。
「…ねぇ、あなた空飛びたいのよね?」
え、うんっと反射的に返すとリーラは自らの背中で何かを外すように体を揺らす動作をし
僕に向けて何かを差し出した。
両手には微かに光りふわふわと浮かんだ玉のようなものがある。
これは何? 不思議な物体のことを聞くとにこりと笑いながら説明した。
「これはね、翼を生やす魔法の道具。これをつけると誰でも空を飛べるわ」
えっ、空を飛べる?予想外の答えに僕は思わず聞き返してしまう。
「う〜ん、これは実際につけてみた方が早いね。背中、借りてもいい?」
そういうと僕が答える間もなくリーラはせっかちに後ろへ回り込んだ。
不安だったけど彼女を落ち込ませるわけにもいかないからいいよって
答えたんだ。
「それじゃあ、つけるわね」

 

 背中に間を開けて両手を押し付けられると、そこから暖かい何かが
体中にじんわりと広がるような感覚に包まれ、脱力してしまうような
温もりある安心感で意識がとけそうになる。気が付くと体を包み込んでいた
不思議な感覚はすでになくなっていて、両手に触れられた箇所に妙な痒みを
僅かに感じるだけだった。
リーラは再び僕の前に立つと微笑みながら両手を大きく広げると
楽しそうに叫んだ。
「さあ、これであなたは空を飛べるよ! 翼を生やすイメージをしながら
思いっきり背中に力をいれてー」
余りにもあっさりとした取り付けに拍子抜けしながらも、僕はこぶしを握り
足を開いたら背中に力を入れるつもりで思い切り上げる。
うぅー!!と声を上げて力み見続ける。すると背中辺りから暖かいものが
こみ上げてくる。暖かいものはそのまま盛り上がるような感覚に代わり
その直後、何かが突き破った。
痛みは感じなかったけど背中に体重がかかり思わず後ろに倒れそうになる。
「あぶなーい!」
とっさにリーラが僕の両腕を掴んで自らの方へ引いた。
う……リーラの顔が僕の真ん前に…リーラは間に合って
ほっとすると、力強い笑みを浮かべて安心させようとまっすぐこちらの
目を見る。僕は恥じらいを感じて思わず顔をそむけてしまう。
「私が支えてあげる、さあ力を入れて」
そのまま僕は頷いて再び力を込める。背中にかかる重さは
更に増していき、倒れないようリーラが両腕を掴みながら
踏ん張っている。その姿を見て僕も頑張ろうともっともっと
力を込めた。

 

 

 

 

 

「よし、もう大丈夫。後ろを見あげてみて」
リーラの声に応え後ろを見上げると信じられない光景が
見えた。後ろには背中から白く大きな翼が生えていた。僕はびっくりして
うわー、って大きな声を上げてしまった。
「びっくりしたでしょー。これであなたは空を飛べるようになったわ」
僕を支えながら嬉しく自慢げに話す。信じられない、一体どうなって
いるんだろう。そんな疑問が浮かび上がるも、不意に頭の中で掠めた
考えで体を貫くような衝撃を覚える。

 

 これで空を飛ぶことができる…? 

    ずうっと高く高く飛んで行けるなら、会えるかもしれない……

 

すると背中に生えた翼は大きな音を立てて仰ぎだした。強風が
僕の前から吹き、リーラの毛とローブを激しく揺らした。
小さな体を吹き飛ばされそうになりながらも辛うじて踏みとどまった
リーラはわざとらしい口調で怒り出す。
「もう、いきなり羽ばたかないでよ。飛ばされるかと思って
びっくりしたじゃない!」
無意識だったけど自分の先走った気持ちで迷惑をかけてしまい
反射的に謝る。
しょうがないなあと思わせるように溜息を付くと
耳元に顔を近づけ、手で覆うと吐息交じりに囁いた。
「ねぇ、飛びたいでしょ・・・」
あっ・・・って思わず口に出してしまった。リーラの言葉を聞いて
心の底に募っていた思いがあふれ出した。

 

ぼくは とびたい !!

 

とんでとんで おかあさんやおとうさんのところへ とびたい

 

その瞬間、リーラのことを忘れたかのように羽ばたきだし、周りの
花を散らしながら宙に浮き始める。
「ちょっと、いきなり羽ばたかないでっていったでしょ!」
眼下の景色がどんどん小さくなり、花畑のすべてが視界内に収まる。
遠くに見える景色も、途中にある山で見えなかった先の景色が
見えるようになっていた。これが、これが空を飛ぶってことなんだ。

 

もうがまんできない、とんでいきたい!!!!

 

大きな翼を帆のように広げると、激しく羽ばたいて花畑から離れていった。
「ピピー、何も知らないで飛び回ると危ないわー! 戻ってきてー!!!」
大空を羽ばたいて行くと、ひと際大きな雲が塞がるように浮かんでいた。
もっと高くと突っ切るように入っていく。雲の中は水気を帯びていて
飛んでいるうちに目が濡れて視界が遮られる。混乱した僕は思わず体勢を崩して
羽をバタつかせ体を回しながら雲から落ちていった。
視界が目まぐるしく移り変わり、よく分からないことになっていた。
ただ分かるのは、空がだんだん遠くなり、地上がだんだん近づいていくこと。
恐怖でさらに体を動かすも、大きな翼に振り回されて思うように動けない。
何とかできないか、何とかできないか、そうしているうちに背中から
叩きつけられるような衝撃に襲われる。痛みが全身を貫き呻き声を
上げてしまい、瞬く間に視界が暗くなる。

 

 

ここは…どこだろう。 だれもいない
すべてがまっくらになっていて たっているかんかくもない

 

        ピピ…        ピピ…

 

おかあさん? それともおとうさん? かすかなおとでそれでいて
いまいるところすべてから きこえてきて どこからよばれているのかわからない。

 

おかあさん どこにいるの おとうさん へんじをしてよ
どうしてでてこないの さびしいよ さびしいよ…
おねがいだよ またぼくを だきしめてよ

 

だんだんとからだがしずんでいく ぼくはどこにいくんだろう

おかあさん… おとうさん… さびしい… さびしいよ…


        ピピ…        ピピ…        ピピ!!

 

……リーラ…?

辺りが真っ白い景色に包まれる。僕はまぶしくて目をつぶった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピピ!? ピピ!? 良かった…生きていたのね」
気が付くと僕は花畑に、翼を背に敷きながら倒れていた。
「……心配かけないでよ、私の翼でピピが死んだら
私…悲しいのよ…」
リーラの思いを考えなかったことに僕は申し訳ない気持ちで
いっぱいになり、彼女に目を合わせられずそむけてしまう。
リーラはそれを察したかのように優しく頭をさする。
と、彼女の目から涙がこぼれ、堪え切れないと僕に抱きかかってくる。
「よかったぁ ほんとによかったぁ もどってきてくれて
よかったよぉぉぉ」
嬉しさを滲ませる涙声で迫られ呆気にとられてしまう。
怒られてしまうと思っていた僕は、それまでの緊張感が
解けて涙が溢れ、リーラよりも先に零しながら彼女の名前を
涙声で呼ぶ。

 

 


暗闇の中、冷たい世界に閉じ込められた僕は
徐々に意識と体力が奪われ死というものを実感し、誰も手を
差し伸べてくれない孤独感に苛まれた。それだけに
リーラの思いやりがとても暖かく、僕は泣き崩れてしまった。
……ありがとう、リーラ…本当に…嬉しいよ…。
涙が止まらない、止まらないよ。僕は笑いたいのに、笑って
リーラを安心させたいのに…止まらないよ…。


fin

 

後書き

本作を書くうえで、私はテーマとして「空を飛ぶ」というのを題材に
してました。それに設定を付けてそれをもとにシナリオを考えました。

最初に思い描いたのは、インディアンっぽい民族風の設定で
とある集落に住むレッサーモクリ達の中で一人の少年が自然災害である豪雨を降らす
雲を恨み、親の仇をとるために空を飛んでやっつけようとするものです。

空を飛ぶ理由に説得力を持たす為に、両親を失ったという
経緯を付けたのは良かったのですが、レッサーモクリ周りの
民族設定で難儀し、もともと小説を書くことが殆どないし見ることも
最近はない、というのでイメージを文字に起こすのが大変困難でした。
労力を減らすため少しでも短くしようと私は、登場人物を減らすなり
展開を変えたりとしましたが、やはり世界を文字に起こすのは
1週間以内に出来そうにありませんでした。




なのでいっそのこと、世界を書かず、キャラクターを書くことにしました。
シナリオ変更もあり、キャラの容姿特にピピの容姿が描けず、世界の
空気感も描写できませんでした(というかそもそも全然考えられなかった)。
リーラというキャラも、デウスエクスマキナそのもので、あまり練れずに
出したのは悔しかったですが、前シナリオで考えていた、雲の中で
暴れまわるというのは経緯が違えど描写できて、終わり間近で
表現したかった満面のハッピーエンドに、マイナス要素を織り込む
というのが出来たので、まあ良しって感じです。

本当に拙い出来のSSですが、楽しんでくれたら幸いです。
そして後書きも覗いて下さり、本当にありがとうございました

 

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